鵜匠の格式
鵜の特性
鵜は、カツオドリ目ウ科の水鳥の総称です。ぎふ長良川鵜飼では、カワウよりも体が大きくて丈夫なウミウを使います。現在、茨城県日立市十王町の伊師浜(いしはま)海岸で野生のウミウが捕獲され、各鵜匠家に届けられています。届けられたばかりの鵜を「シントリ」と呼びます。
鵜は、人に懐き、人が扱いやすい鳥です。また、視力が優れています。さらに、逃げる時、喉にためた魚を吐き出して飛び去ります。こうした特徴や習性が、鵜を使うヒントになったという説があります。鵜が視界に入る魚を可能な限り捕える鵜飼は、他の漁法に比べて魚の捕り逃しが少なく、効率的と言えます。また、鵜がくわえると魚が一瞬で死ぬので、脂が逃げず鮮度がいいと言われています。
鵜飼の一日
朝、鵜匠は鳥屋に行き、鳥屋籠から鵜を1羽ずつ取り出し、喉や腹に触れて、体調を把握します。鵜が快適に過ごせるよう、鳥屋の掃除も定期的に行います。
夕方、鵜匠は再び鳥屋に行き、その日の漁に連れて行く鵜を選ぶと、鵜籠に入れます。そして、鵜舟に乗り込み、「まわし場」という鵜飼が始まるまでの待機場所に向かいます。出漁間際に、6艘の鵜舟が出発する順番をくじで決め、鵜飼漁が始まります。
鵜飼漁では、まず鵜舟と鵜飼観覧船が並走して、川を下りながら漁をする「狩り下り」を行います。狩り下りを終えると、鵜舟は再び川を上り、6艘が川幅いっぱいに斜めに広がり、同方向へゆっくり下りながら漁をする「総がらみ」を行います。
鵜飼漁を終えると、鵜を鵜籠に戻します。鵜の腹をさすって食べ方の足りない鵜に餌を与えることもあります。これを「あがり」と呼びます。あがりを終えると、篝火を川に落とし、家に帰ります。鵜を鳥屋籠に戻して休ませ、鵜飼の一日が終わります。
鵜飼の一年
御料鵜飼・皇室の鵜飼御視察
「御料鵜飼」とは、宮内庁式部職鵜匠としての職務で、禁漁区である「御料場」で、皇室に納める鮎を捕る鵜飼のことです。鵜飼シーズン中に8回行われます。漁のみで観覧客のいない「平御料」と、宮内庁が駐日外国大使・公使夫妻などを招待して鵜飼を見せる「本御料(外交団接待鵜飼)」の2種類があります。外交団接待鵜飼では、鵜飼観覧船の両側に鵜舟がついて狩り下ることもあるほか、御料場の下流で総がらみが行われたりするなど、通常の鵜飼とは一味違います。
御料場では、皇族方による鵜飼御視察もあります。近年では、1997(平成9)年に天皇皇后両陛下が、2005(平成17)年に秋篠宮(あきしののみや)同妃両殿下が、2012(平成24)年に皇太子殿下が鵜飼をご視察されました。